事務局 2010年度 長野県山岳協会 総括報告


去る3月11日に三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の大地震、大津波、また栄村においても大地震が発生しました。さらには福島第一原子力発電所の事故により、東北関東、また長野県などの広い地域の皆様が被災にあわれ、多くの尊い人命が失われましたことには衷心より厚く哀悼の意を表します。さらに今なお多くの方が厳しい避難生活を続けておられますことにお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧、復興がなされますことを心から祈念致します。
さて、宮本体制1期目の2010年度は、過去3期6年間にわたって積み重ねてきた柳澤体制の取り組みを継続発展させる方向性の下、「登山活動を行うための山岳協会であること」を第一義に目的、意義に則った協会構築を引き続き目指し、今年度迎える50周年を協会が一丸となって迎えられるべく、理事一丸となって協会運営を進めてまいりました。その上で、規約に掲げられている「正しい登山を指導普及してその健全な発展をはかり、あわせて加盟団体の交流をはかりながら、国民体育ならびに文化の向上に寄与することを目的とする。」という観点も重要なものと捉え、協会の社会還元も念頭において、単に協会内にとどまらない諸活動を行ってまいりました。
前段においては、それぞれの支部、委員会等がただ漫然と従来の活動をなぞるのではなく、幹事会や委員会に担当の副会長も同席、協会とのパイプも太くしながら検討を加え、支部や委員会の間でも横の連携をとりながら、それぞれの事業を展開しました。後段の活動として、各支部では「夏山登山教室」を開催し、「ジュニア委員会」では、昨年に引き続き小学生を対象とした自然体験型の登山教室を2回開催しました。また、今年度から新たに中高年担当理事のポストを設け、「中高年登山団体連絡協議会」とも手を携えながら、協会としても中高年登山者の問題について検討をすすめ、中高年登山者の組織化の問題や事故防止を考えるため11月に「中高年安全登山研究会」を開催しました。「自然保護委員会」におけるフィールドワークの一層の充実や「医科学委員会」の講習会の実施など、多くの分野で内容の濃い企画を立て、協会内外に呼びかけて社会還元をすることができました。「事業部」ではこれら協会の諸活動を年間を通じて参加してもらえるように、年度の早い段階で、協会全体の事業計画をダイレクトメールで会員に送りました。2011年度に迎える長野県山岳協会50周年に向けては、その記念事業の推進役となる「実行委員会」を重ねる中で、具体化に向けて動いてきました。
山岳会の衰退の中で「協会」の役割が見えにくくなってきた昨今、協会員のニーズを正しくつかみ、それに沿った形で一人ひとりの顔が見えるような運営をしていくことがこれまで以上に求められていると考えています。
この様な中、これまで述べてきたような活動を地道に続けてきましたが、まだ不十分な点も多く、今後も現状課題の再検証や新たな課題の把握について対応し、その解決に向けた努力をさらに続けていきたいと考えています。

登山の普及・技術の向上・啓蒙活動
登山の普及は、協会加盟団体の活動そのものであると同時に、協会、加盟団体の持てる力の社会還元の二面を持っています。後段の社会還元については山岳協会、各山岳会が社会的にも認知されることで、個々の登山活動の展開にも有意な影響を及ぼすものと考えられます。夏山登山教室については、各支部がそれぞれ重要事業として捉え着実に実施されました。今年度も県の遭難防止対策協議会から補助金をいただきましたが、経年的に行われてきた実績に対しその意義は社会的にも充分に理解されています。
指導委員会と遭難対策委員会では、ここ数年の流れを受け、5月の針ノ木でのキャンプ、山岳総合センターとのタイアップによるレスキュー研修会(夏冬2回)、長山協キャンプでの合同研修会を実施しました。内容面では非常に充実しているものの、参加者に固定化の傾向が見られており、活性化に向けた活動が課題といえます。なお、指導委員会においては、指導員制度の変更に伴い資格取得に共通科目の義務づけがされるなど負担の増加が生じる中、今後の指導員資格者養成にあっては、経験則も含めた技術、理論の向上等現有資格者の自覚も促しながら、次代に伝えていくことが大切です。また日山協の指導員資格として従来の指導員とは別に新たにスポーツクライミング指導員が設けられたことを受け、長山協としてもその養成への援助を行いました。
自然保護委員会では、「まず実態を知ろう」と協会内外の人に呼びかけて様々な観点から継続的に自然保護観察会を行ってきましたが、2010年度は乗鞍岳のライチョウを取り上げました。震災の影響で、第2回目の観察会が中止になってしまったのは残念でしたが、長山協セミナーでの机上学習(ライチョウ問題・シカ食害問題)とも合わせ、参加者の意識も高く、有意義な活動となっており、地道な活動が少しずつ定着してきています。
ジュニア委員会では山岳総合センターとの共催、競技部との共同歩調によるスポーツクライミングを主体に人工壁だけでなく自然の岩場も活用した中高生の育成への取り組みを継続し、国体等でも活躍する選手を育ててきました。経年的に行っているフリークライミング強化プロジェクトの成果が現れてきており、岩場で登れる若者が育ってきています。また、昨年から始めたジュニア層へ野外活動の素晴らしさを伝える取り組みは今年度も2回実施し、少しずつ経験も蓄積されてきています。この取り組みは日山協からも評価されていますが、今後への足がかりとなる取り組みとして評価できます。

競技登山
2008年度大分国体からは、リードクライミングとボルダリングの2種目での競技となりました。選手育成はもとより、審判員の育成に関しても昨年度に引き続き取り組みましたが、現実問題として広く協会内に認知された取り組みにまでいたってはいないのが現状といえます。第65回国民体育大会(千葉県)の予選会として富山県で開催された北信越国体には、少年女子がエントリーできませんでした。裾野を広げる活動が必要です。しかし、北信越国体はもとより本国体においても、出場権を獲得した選手諸君は、それぞれの種別において自己の持てる力を十分発揮し、成果をあげました。とりわけ少年男子のボルダリングは6位と4年連続での本国体入賞を果たしました。ジュニア委員会と競技部が合同で行っている強化の結果が現れてきています。
 日本山岳協会主催による「第6回山岳スキー競技日本選手権大会」は「第3回山岳スキー競技アジアカップ」を兼ねて小谷村において開催され、地元である当協会は過去の大会同様北信越各県、日山協派遣役員からの支援を得て企画運営に協力しました。

国際登山・国際交流
国際部では秋に海外登山研究会を、また冬には共催で山のセミナーを開催し、情報交換の場を設定しました。現実問題としては国際登山の実行が大変に困難で情報や報告が活かされにくい状態が続いています。交流関係も含めて、この一年はやや低調ではありましたが、50周年事業の中には、トレッキングも含む登山がいくつか盛り込まれています。それらを起爆剤に夢のある企画が育っていくことを期待します。

事業部
第2回目の長山協ミーティングを須坂市で行いました。古原名誉会長の秘蔵のフィルムを鑑賞するという貴重な会でしたが、参加者が少なかったのがやや残念でした。また、国際部、医科学委員会、自然保護委員会の3者共催の山のセミナーについては、事業部が企画調整を行いました。これまで1泊で行っていましたが、今年度は日帰りで行いました。スムーズな進行と盛り沢山な内容で好評でした。

医科学
昨年に引き続き「やまなみ」での「登山の医学」連載、「山のセミナー」での講座のほか、昨年度の「山のセミナー」で好評だったトレーナーによる専門的な講座(ストレッチング講座)を11月に独立して開催しました。いずれの企画も登山者に必要な知恵や技術であり、協会内にとどまらず広く登山愛好家にも好評でした。登山者の立場にたった医科学委員会であるために、今後はこういった協会員のニーズにあった企画をさらに検討して行きたいと考えます。
昨年度からはじめた登山者の山岳高所における影響を調査については、医科学委員会でパルスオキシメータを一台用意してありますので、活用していただきたいと思います。これについては、今後専門家の意見を聞きながらどう進めていくのかが課題です。

事務局(総務・財務・やまなみ・ホームページ)
収入収支については、理事などの個人負担も少なからず残る中、「やまなみ」発行回数、連絡通知のメール化による郵送経費削減等により収支バランスは良くなりました。今後も有効かつ適切な予算執行を進める必要がありますが、ここ数年の電子化により財政的にはゆとりが生まれている一方で、一方通行のメールは情報伝達という点で紙ベースの情報のような確実性に欠け、周知徹底が十分図れていない現状が生まれています。重要な情報は、郵送・メール便等を使うことを改めて考えることも必要です。
「やまなみ」は予定通り4回の発行を行いました。また情報提供は各会へのメール、FAX、「長山協メール通知サービス」へのメールおよび協会ホームページの活用により、現段階としては良好な状況で行えたものと考えています。今後、ホームページ掲載のタイムリー化、適時の更新のための方策を考え、また当協会の旧名称を名乗る他団体との混同を社会に招かないよう引き続き注意を喚起し、未だ混同したリンクを張るホームページ開設者に対しての働きかけを行っていく必要があるものと考えます。

長山協50周年記念事業
2011年に50周年を迎える長山協の節目の年に記念事業を行うべく、実行委員会を立ち上げ、その具体化に向けて6回の会議を開催しました。「信州の山に登り、学び続ける」のテーマの下、協会一丸となって取り組める諸事業の計画を進めてきました。